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夏目漱石--梦十夜-2

作者:夏目漱石 字数:15478 更新:2023-10-10 09:44:40

大概是很久很久以前,或許是兩千多年前的神話時代吧,那時我是個士兵,不幸打敗戰,被當成俘虜強行拉到敵方大將面前。當時的人們都是高頭大馬,而且都蓄著很長的鬍鬚。腰上繫著皮帶,並掛著棒子般的長劍。弓則好像是用粗藤做的,既沒塗上黑漆,也沒磨亮。看上去很樸實。敵方大將坐在一個倒置的酒甕上,右手握著被插在草叢上的弓。我看了他一眼,只見他濃密的粗眉連成一直線。這個時代當然沒有刮鬍刀之類的東西。我因是個俘虜,沒有位子可坐,便在草叢上盤腿而坐。我腳上穿著一雙大草鞋。這個時代的草鞋都很高,立起時,可達膝蓋上。草鞋上端一隅還故意留一串稻草,像穗子一樣自然下垂著,走起路來晃來晃去,是當裝飾用的。大將藉著篝火盯視著我,問我要活亦或要死。這是當時的習慣,每個俘虜都會被問相同的問題。若回說要活,表是願意投降;回說要死,則代表寧死不屈。我只回說,要死。大將把插在草叢上的弓拋向遠方,並拔出掛在腰上的長劍。此時,隨風晃動的篝火湊巧將火舌轉向長劍。我將右手手掌張開成楓葉狀,手心對著大將,抬到雙眼前。這是表示暫停的手勢。於是大將又收回長劍。即使在那遙遠的時代,愛情這個東西仍是存在的。我說,希望在臨死之前能和我的戀人見一面。大將回說,可以等到翌日天明雞啼之時。在雞啼之前,必須把戀人帶來。若誤了時辰,我就不能跟戀人見面而走向死亡之命運。大將又坐下來,眺望著篝火。我交叉著自己的大草鞋,坐在草叢上等候戀人趕來。夜,漸漸深沉。偶爾會傳來篝火崩裂的聲音。每當篝火崩裂,流竄的火焰即狼狽不堪般地將火舌轉向大將。大將的雙眸,在濃眉之下閃閃發光。篝火崩裂後,馬上會有人再拋下樹枝於火中。過一會,火勢又會啪吱啪吱旺盛起來。那聲音,勇猛得似能彈開黯夜一般。此時,女人正牽著一匹被繫在後院橡樹的白馬出來。她三度輕撫了馬的鬃毛,再敏捷地躍上馬背。那是一匹沒有馬鞍亦無踩鐙的裸馬。女人用她那修長雪白的雙腳,踢著馬腹,馬兒即往前飛奔。可能又有人在篝火中添了樹枝,使得遠方天邊顯得幾分明亮。馬兒正朝著這亮光奔馳在黑暗中。鼻頭噴出兩道火柱般的氣息。不過女人仍拼命以修長的雙腳猛踢馬腹。馬兒奔馳得蹄聲都能傳到天邊。女人的長髮更在黑暗中飛揚得宛如風幡。然而,女人與馬,仍離目標有一段距離。突然,黑漆漆的路旁,響起一聲雞啼。女人往後仰收緊握在手中的韁繩。馬兒的前蹄噹啷一聲刻印在堅硬的岩石上。女人耳邊又傳來一聲雞啼。女人叫了一聲,將收緊的韁繩放鬆。馬兒屈膝往前一衝,與馬上的人兒一起衝向前方。前方岩石下,是萬丈深淵。馬蹄痕現在仍清晰地刻印在岩石上。模仿雞啼聲的是天探女(譯注:又名天邪鬼,佛教中被二王、毘沙門天王踩在腳底下專門與人作對的小鬼)。只要這馬蹄痕還刻印在岩石上期間中,天探女永遠是我的敵人。第六夜 運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評をやっていた。 山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、その幹が斜めに山門の甍を隠して、遠い青空まで伸びている。松の緑と朱塗の門が互いに照り合ってみごとに見える。その上松の位地が好い。門の左の端を眼障にならないように、斜に切って行って、上になるほど幅を広く屋根まで突出しているのが何となく古風である。鎌倉時代とも思われる。 ところが見ているものは、みんな自分と同じく、明治の人間である。その中でも車夫が一番多い。辻待をして退屈だから立っているに相違ない。「大きなもんだなあ」と云っている。「人間を拵えるよりもよっぽど骨が折れるだろう」とも云っている。 そうかと思うと、「へえ仁王だね。今でも仁王を彫るのかね。へえそうかね。私ゃまた仁王はみんな古いのばかりかと思ってた」と云った男がある。「どうも強そうですね。なんだってえますぜ。昔から誰が強いって、仁王ほど強い人あ無いって云いますぜ。何でも日本武尊よりも強いんだってえからね」と話しかけた男もある。この男は尻を端折って、帽子を被らずにいた。よほど無教育な男と見える。 運慶は見物人の評判には委細頓着なく鑿と槌を動かしている。いっこう振り向きもしない。高い所に乗って、仁王の顔の辺をしきりに彫り抜いて行く。 運慶は頭に小さい烏帽子のようなものを乗せて、素袍だか何だかわからない大きな袖を背中で括っている。その様子がいかにも古くさい。わいわい云ってる見物人とはまるで釣り合が取れないようである。自分はどうして今時分まで運慶が生きているのかなと思った。どうも不思議な事があるものだと考えながら、やはり立って見ていた。 しかし運慶の方では不思議とも奇体ともとんと感じ得ない様子で一生懸命に彫っている。仰向いてこの態度を眺めていた一人の若い男が、自分の方を振り向いて、「さすがは運慶だな。眼中に我々なしだ。天下の英雄はただ仁王と我れとあるのみと云う態度だ。天晴れだ」と云って賞め出した。 自分はこの言葉を面白いと思った。それでちょっと若い男の方を見ると、若い男は、すかさず、「あの鑿と槌の使い方を見たまえ。大自在の妙境に達している」と云った。 運慶は今太い眉を一寸の高さに横へ彫り抜いて、鑿の歯を竪に返すや否や斜すに、上から槌を打ち下した。堅い木を一と刻みに削って、厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと思ったら、小鼻のおっ開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上がって来た。その刀の入れ方がいかにも無遠慮であった。そうして少しも疑念を挾んでおらんように見えた。「よくああ無造作に鑿を使って、思うような眉や鼻ができるものだな」と自分はあんまり感心したから独言のように言った。するとさっきの若い男が、「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」と云った。 自分はこの時始めて彫刻とはそんなものかと思い出した。はたしてそうなら誰にでもできる事だと思い出した。それで急に自分も仁王が彫ってみたくなったから見物をやめてさっそく家へ帰った。 道具箱から鑿と金槌を持ち出して、裏へ出て見ると、せんだっての暴風で倒れた樫を、薪にするつもりで、木挽に挽かせた手頃な奴が、たくさん積んであった。 自分は一番大きいのを選んで、勢いよく彫り始めて見たが、不幸にして、仁王は見当らなかった。その次のにも運悪く掘り当てる事ができなかった。三番目のにも仁王はいなかった。自分は積んである薪を片っ端から彫って見たが、どれもこれも仁王を蔵しているのはなかった。ついに明治の木にはとうてい仁王は埋っていないものだと悟った。それで運慶が今日まで生きている理由もほぼ解った。風聞運慶(譯注:鐮倉時代著名的佛像雕鑿師)正在護國寺山門雕鑿仁王像,於是於散步時順道繞過去看看,不料在我之前早已聚集了許多慕名而來的人,你一言我一語地議論紛紛。山門前九、十公尺左右處,有一株巨大的赤松,枝幹橫生,遮蔽了山門的棟瓦,直伸向遙遠的青空。綠松與朱門相映成趣,實為一幅美景。而且松樹的位置絕佳,不礙眼地挺立於山門左端,再斜切山門往上伸展,越往上枝葉幅度越寬,並突出屋頂,看起來古意盎然。想見是鐮倉時代不錯。可是四周觀賞的人,竟與我同樣,都是明治時代的人。而且大半都是人力車車夫。大概是等候載客無聊,跑到這裡來湊熱鬧。「好大啊!」有人說。「這個一定比雕鑿一般人像還要辛苦吧!」又有人說。「喔,是仁王。現在也有人在鑿仁王啊?我還以為仁王像都是古時鑿的。」另一個男子如此說。「看起來很威武的樣子。要說誰最厲害,從古至今人們都說仁王最厲害。聽說比日本武尊(譯注:大和國家成立初期的傳說中英雄)更強呢!」另一個男子插口道。這男子將和服後方往上折進背部腰帶,又沒戴帽子,看起來不像是受過教育的人。運慶絲毫不為圍觀者的閒言閒語所動,只專心致意揮動著手中的鑿子和棒槌。他甚至連頭也不回,立在高處仔細雕鑿著仁王的臉部。運慶頭上戴著一頂小烏紗帽般的東西,身上穿著一件素袍(譯註:鐮倉時代的庶民麻布便服)之類的衣服,寬大的兩袖被縛在背部。樣子看起來很古樸。和在四周喋喋不休看熱鬧的人群格格不入。我仍舊立在一旁,心裡奇怪運慶為何能活到現在,真是不可思議。可是運慶卻以一付理所當然,不足為奇的態度拼命雕鑿著。一個仰頭觀看的年輕男子,轉頭對我贊賞道:「真不愧是運慶,目中無人呢!他那種態度好像在說,天下英雄唯仁王與我。真有本事!」我覺得他說的很有趣,回頭看了他一眼,他立刻又說:「你看他那鑿子和棒槌的力道!真是達到運用自如的境界!」運慶正鑿完約有三公分粗的眉毛,手中的鑿齒忽豎忽橫地轉變角度,再自上頭敲打棒槌。看他剛在堅硬的木頭上鑿開一個洞,厚厚的木屑應著棒槌聲飛落,再仔細一看,仁王鼻翼的輪廓已乍然浮現。刀法異常俐落,且力道絲毫沒有遲疑的樣子。「真行!他怎能那樣運用自如,鑿出自己想鑿的眉毛與鼻子的形狀?」我由於太感動,不禁自言自語地說著。剛剛那個年輕男子回我說:「不難啊!那根本不是在鑿眉毛或鼻子,而是眉毛與鼻子本來就埋藏在木頭中,他只是用鑿子和棒槌將之挖掘出而已。這跟在土中挖掘出石頭一樣,當然錯不了。」這時,我才恍悟原來所謂的雕刻藝術也不過是如此。若真是如此,那不管是誰,不是都能雕鑿了?想到此,我突然興起也想雕鑿一座仁王像的念頭,於是,決定不再繼續觀賞下去,打道回府。我從工具箱找出鑿子和棒槌,來到後院,發現前一陣子被暴風雨颳倒的橡樹,因為想用來當柴火燒,請伐木工人鋸成大小適中的木塊,被堆積在一隅。我選了一塊最大的,興致勃勃地開始動工,不幸的是,鑿了老半天仍不見仁王的輪廓浮現。第二塊木頭也鑿不出仁王。第三塊木頭裡也沒有仁王。我將所有木頭都試過一次,發現這些木頭裡都沒有埋藏仁王。最後我醒悟了,原來明治時代的木頭裡根本就沒有埋藏仁王。同時,也明白了為何運慶至今仍健在的理由。第七夜 何でも大きな船に乗っている。 この船が毎日毎夜すこしの絶間なく黒い煙を吐いて浪を切って進んで行く。凄じい音である。けれどもどこへ行くんだか分らない。ただ波の底から焼火箸のような太陽が出る。それが高い帆柱の真上まで来てしばらく挂っているかと思うと、いつの間にか大きな船を追い越して、先へ行ってしまう。そうして、しまいには焼火箸のようにじゅっといってまた波の底に沈んで行く。そのたんびに蒼い波が遠くの向うで、蘇枋の色に沸き返る。すると船は凄じい音を立ててその跡を追かけて行く。けれども決して追つかない。 ある時自分は、船の男を捕まえて聞いて見た。「この船は西へ行くんですか」 船の男は怪訝な顔をして、しばらく自分を見ていたが、やがて、「なぜ」と問い返した。「落ちて行く日を追かけるようだから」 船の男はからからと笑った。そうして向うの方へ行ってしまった。「西へ行く日の、果は東か。それは本真か。東出る日の、御里は西か。それも本真か。身は波の上。[#「楫」に「ほこづくり」を加える、55-12]枕。流せ流せ」と囃している。舳へ行って見たら、水夫が大勢寄って、太い帆綱を手繰っていた。 自分は大変心細くなった。いつ陸へ上がれる事か分らない。そうしてどこへ行くのだか知れない。ただ黒い煙を吐いて波を切って行く事だけはたしかである。その波はすこぶる広いものであった。際限もなく蒼く見える。時には紫にもなった。ただ船の動く周囲だけはいつでも真白に泡を吹いていた。自分は大変心細かった。こんな船にいるよりいっそ身を投げて死んでしまおうかと思った。 乗合はたくさんいた。たいていは異人のようであった。しかしいろいろな顔をしていた。空が曇って船が揺れた時、一人の女が欄に倚りかかって、しきりに泣いていた。眼を拭く手巾の色が白く見えた。しかし身体には更紗のような洋服を着ていた。この女を見た時に、悲しいのは自分ばかりではないのだと気がついた。 ある晩甲板の上に出て、一人で星を眺めていたら、一人の異人が来て、天文学を知ってるかと尋ねた。自分はつまらないから死のうとさえ思っている。天文学などを知る必要がない。黙っていた。するとその異人が金牛宮の頂にある七星の話をして聞かせた。そうして星も海もみんな神の作ったものだと云った。最後に自分に神を信仰するかと尋ねた。自分は空を見て黙っていた。 或時サローンに這入ったら派手な衣裳を着た若い女が向うむきになって、洋琴を弾いていた。その傍に背の高い立派な男が立って、唱歌を唄っている。その口が大変大きく見えた。けれども二人は二人以外の事にはまるで頓着していない様子であった。船に乗っている事さえ忘れているようであった。 自分はますますつまらなくなった。とうとう死ぬ事に決心した。それである晩、あたりに人のいない時分、思い切って海の中へ飛び込んだ。ところが――自分の足が甲板を離れて、船と縁が切れたその刹那に、急に命が惜しくなった。心の底からよせばよかったと思った。けれども、もう遅い。自分は厭でも応でも海の中へ這入らなければならない。ただ大変高くできていた船と見えて、身体は船を離れたけれども、足は容易に水に着かない。しかし捕まえるものがないから、しだいしだいに水に近づいて来る。いくら足を縮めても近づいて来る。水の色は黒かった。 そのうち船は例の通り黒い煙を吐いて、通り過ぎてしまった。自分はどこへ行くんだか判らない船でも、やっぱり乗っている方がよかったと始めて悟りながら、しかもその悟りを利用する事ができずに、無限の後悔と恐怖とを抱いて黒い波の方へ静かに落ちて行った。我搭上一艘大船。這艘船日夜無休無止盡地吐著黑煙,破浪前行。船發出很響亮的聲音。可是我不知道這艘船將駛往何方。只是每天可見燒紅火箸般的太陽,從浪底昇上來。昇到高聳的帆柱上空時,會駐足不動,但不一會兒又會超越船身,漸行漸遠。最後再像燒紅火箸浸入水中般,發出嗤嗤聲沉入浪底。每當太陽沉入浪底時,遠方的綠波會滾滾沸騰成酡紅色。大船也會發出震耳欲聾的聲響奮力直追,卻總是瞠乎其後。某天,我抓住一位船上的男子問:「這艘船是在往西行嗎?」男子訝異地觀看了我一會兒後,才回問:「為什麼?」「因為看上去好像在追落日。」男子呵呵笑了起來。然後逕自走遠。爾後,耳邊傳來一陣喝彩。「西行之日,盡頭是東嗎?這是真的嗎?日出東方,娘家是西嗎?這也真的嗎?身在浪上,以櫓為枕,漂啊漂吧!」我循聲走至船首,原來是許多水手們正在合力拉著粗重的帆繩。我感到非常不安。既不知何時才能靠岸,也不知將駛往何方。只知道船隻吐著黑煙一直前行。巨浪滔天,蒼藍得無可言喻,有時又會化為紫色。只有船身四周總是白沫飛騰。我感到非常不安。心想,與其待在船上,不如縱身海底。船上乘客很多。但大半是外國人。不過容貌有異。某天,天色陰霾,船身搖晃不定,我瞧見一個女子在倚欄低泣。更瞧見她擦拭眼淚時那條白色手帕。她身穿印花洋裝。看到她時,我才恍悟原來船上悲傷的人不只是我一個。一天夜晚,我獨自在甲板上眺望星空時,有個外國人走近問我懂不懂天文學。我心想,我正無聊得想自殺了,根本沒必要學天文學。所以我不回話。可是這個外國人竟說起金牛宮上有七姊妹星團的事,又說,星空與大海都是上帝的創作。最後問我,信不信上帝。我只是沉默不語地望著星空。又有一次,我到沙龍喝酒,看見一個衣著入時的年輕女子,背對著沙龍入口正在彈鋼琴。她身旁立著一個高大英俊的男子,正在引吭高歌。男子的嘴巴看起來大得驚人。倆人的樣子,看上去像是完全無視他人存在似的,也看上去像是忘卻了身置船上之事似的。我越來越感到無聊。終於下定尋死的決心。因此某天夜晚,趁著四下無人時,斷然縱身躍入海裡。然而……當我雙腳離開甲板,與船隻絕緣的那一剎那,突然感到就這樣死的話太可惜了。我衷心後悔起我做的行動。可是,一切都太遲了。再怎麼後悔,我終究得沉入海底。只是船隻似乎很高,我的身子雖已離開船隻了,雙腳卻久久都不能著水。身旁又沒有可抓的東西,於是我的身子逐漸逼近海面。我拼命縮起腳,但海面仍一步步向我逼近過來。水面一片漆黑。然後,船隻一如平常地吐著黑煙,從我身邊駛過。此時,我才醒悟到,即使不知船隻將駛往何方,我仍應該待在船上的。遺憾的是,我已無法實行了悟後的道理,只能懷抱著無限悔恨與恐佈,靜靜地墜落於黑浪中。第八夜 床屋の敷居を跨いだら、白い着物を着てかたまっていた三四人が、一度にいらっしゃいと云った。 真中に立って見廻すと、四角な部屋である。窓が二方に開いて、残る二方に鏡が懸っている。鏡の数を勘定したら六つあった。 自分はその一つの前へ来て腰をおろした。すると御尻がぶくりと云った。よほど坐り心地が好くできた椅子である。鏡には自分の顔が立派に映った。顔の後には窓が見えた。それから帳場格子が斜に見えた。格子の中には人がいなかった。窓の外を通る往来の人の腰から上がよく見えた。 庄太郎が女を連れて通る。庄太郎はいつの間にかパナマの帽子を買って被っている。女もいつの間に拵らえたものやら。ちょっと解らない。双方とも得意のようであった。よく女の顔を見ようと思ううちに通り過ぎてしまった。 豆腐屋が喇叭を吹いて通った。喇叭を口へあてがっているんで、頬ぺたが蜂に螫されたように膨れていた。膨れたまんまで通り越したものだから、気がかりでたまらない。生涯蜂に螫されているように思う。 芸者が出た。まだ御化粧をしていない。島田の根が緩んで、何だか頭に締りがない。顔も寝ぼけている。色沢が気の毒なほど悪い。それで御辞儀をして、どうも何とかですと云ったが、相手はどうしても鏡の中へ出て来ない。 すると白い着物を着た大きな男が、自分の後ろへ来て、鋏と櫛を持って自分の頭を眺め出した。自分は薄い髭を捩って、どうだろう物になるだろうかと尋ねた。白い男は、何にも云わずに、手に持った琥珀色の櫛で軽く自分の頭を叩いた。「さあ、頭もだが、どうだろう、物になるだろうか」と自分は白い男に聞いた。白い男はやはり何も答えずに、ちゃきちゃきと鋏を鳴らし始めた。 鏡に映る影を一つ残らず見るつもりで眼を睁っていたが、鋏の鳴るたんびに黒い毛が飛んで来るので、恐ろしくなって、やがて眼を閉じた。すると白い男が、こう云った。「旦那は表の金魚売を御覧なすったか」 自分は見ないと云った。白い男はそれぎりで、しきりと鋏を鳴らしていた。すると突然大きな声で危険と云ったものがある。はっと眼を開けると、白い男の袖の下に自転車の輪が見えた。人力の梶棒が見えた。と思うと、白い男が両手で自分の頭を押えてうんと横へ向けた。自転車と人力車はまるで見えなくなった。鋏の音がちゃきちゃきする。 やがて、白い男は自分の横へ廻って、耳の所を刈り始めた。毛が前の方へ飛ばなくなったから、安心して眼を開けた。粟餅や、餅やあ、餅や、と云う声がすぐ、そこでする。小さい杵をわざと臼へあてて、拍子を取って餅を搗いている。粟餅屋は子供の時に見たばかりだから、ちょっと様子が見たい。けれども粟餅屋はけっして鏡の中に出て来ない。ただ餅を搗く音だけする。 自分はあるたけの視力で鏡の角を覗き込むようにして見た。すると帳場格子のうちに、いつの間にか一人の女が坐っている。色の浅黒い眉毛の濃い大柄な女で、髪を銀杏返しに結って、黒繻子の半襟のかかった素袷で、立膝のまま、札の勘定をしている。札は十円札らしい。女は長い睫を伏せて薄い唇を結んで一生懸命に、札の数を読んでいるが、その読み方がいかにも早い。しかも札の数はどこまで行っても尽きる様子がない。膝の上に乗っているのはたかだか百枚ぐらいだが、その百枚がいつまで勘定しても百枚である。 自分は茫然としてこの女の顔と十円札を見つめていた。すると耳の元で白い男が大きな声で「洗いましょう」と云った。ちょうどうまい折だから、椅子から立ち上がるや否や、帳場格子の方をふり返って見た。けれども格子のうちには女も札も何にも見えなかった。 代を払って表へ出ると、門口の左側に、小判なりの桶が五つばかり並べてあって、その中に赤い金魚や、斑入の金魚や、痩せた金魚や、肥った金魚がたくさん入れてあった。そうして金魚売がその後にいた。金魚売は自分の前に並べた金魚を見つめたまま、頬杖を突いて、じっとしている。騒がしい往来の活動にはほとんど心を留めていない。自分はしばらく立ってこの金魚売を眺めていた。けれども自分が眺めている間、金魚売はちっとも動かなかった。跨進理髮店門檻時,三、四個穿著白色制服的員工異口同聲地喊著歡迎光臨。我站在理髮店中央環顧四周,這是一間四方形的房間。兩邊有窗,另兩邊掛著鏡子。數了數,共有六面鏡子。我坐到其中一面鏡子前,剛坐下椅子就發出噗嗤聲。看來這是張挺舒服的椅子。鏡子清晰地映照出我的臉。鏡中的臉後,可見窗戶,也可見斜後方的櫃台。櫃台裡沒有人。倒是窗外來來往往的行人的上半身,看得很清楚。我看到庄太郎帶著一個女人走過。他戴著一頂不知何時買回的巴拿馬草帽。那女人也不知何時釣上的。兩人看上去一臉春風得意的樣子。本想再仔細瞧瞧女人長得什麼模樣,可惜兩人已走遠了。再來是豆腐小販吹著喇叭經過。他把喇叭含在嘴裡,因此雙頰像被蜜蜂螯過似地鼓得腫腫的。正因為鼓著雙頰經過,害我老掛在心上,總覺得他這輩子一直像被蜜蜂螯到一樣。有個藝妓出來了。臉上還沒上妝。本梳成島田髻的髮型也鬆落了,看起來懶懶散散的樣子。不但睡眼惺忪,臉色也非常蒼白。我向她點了個頭,道了幾句寒喧話,可惜對方老是不出現在鏡中。然後有個穿著白色制服的高大男子,來到我身後,他手持梳子剪刀,仔細地端詳著我的腦袋。我捻著下巴上的薄鬚,問他:怎樣?能不能剪成個樣子?白衣男子,不發一言,只用手中的琥珀色梳子輕輕敲著我的頭。「頭呢?能不能理成個樣子?」我再問白衣男子。白衣男子依然不回話,喀嚓喀嚓地開始動剪。我睜大著雙眼,本不想遺漏任何鏡中的鏡頭的,可是剪刀每一響,就會有黑髮落在眼前,擔心黑髮掉進眼裡,只得閉上眼。豈知白衣男子竟在這時開口:「先生,你看到外面那賣金魚的嗎?」我回說,沒瞧見。他也就沒再開口,繼續操作著剪刀。突然我聽到有人在大喊危險。趕忙睜開雙眼。只見白衣男子的衣袖下出現一個腳踏車輪子。也看到人力車的車把。才剛看到,白衣男子即雙手抓住我的頭,把我的頭扭向別處。腳踏車及人力車都消失了。耳邊又響起剪刀的喀嚓喀嚓聲。不久,白衣男子繞到我旁邊,開始剃起耳朵旁的頭髮。頭髮不再在眼前亂舞,我安心地睜開眼。外面傳來粟糕啊、糕啊、糕啊的叫賣聲。賣糕的特意將小杵擊在臼上,配合著叫賣聲拍子在搗糕。我因為只在兒時曾看過賣粟糕的,所以很想再看一眼,可是賣糕小販卻不肯出現在鏡中。我只聽得見搗糕聲。我將全部視力集中在鏡角。發現櫃台內不知何時坐了一個女子。膚色微黑,濃眉大眼,身材高大,頭上梳了個銀杏髮,穿著一件黑緞白領有襯裡的和服,半蹲半坐地正在數鈔票。好像是十元鈔票。女子垂下長長的睫毛,抿著雙唇,專心數著鈔票,而且數得很快。可是那疊鈔票竟像是永遠都數不完似的。膝上那疊鈔票,看上去至少有百張以上,一百張鈔票再怎麼數應該也還是一百張才對。我茫然地盯視著女子與十元鈔票。突然耳畔響起白衣男子大聲的吆喝:「洗頭吧!」這正是個好機會,於是我從椅子上站起來,順便回頭看了一下櫃台。豈知櫃台內不但沒有女子的身姿,也沒有十元鈔票。付了錢,走出店外,我看到門口左側並排著五個橢圓形木桶,裡面有許多紅色的金魚、有斑紋的金魚、瘦骨嶙峋的金魚、肥金魚。金魚販站在木桶後方。他托著腮,目不轉睛地望著眼前的金魚,完全不為四周的喧嘩景物所動。我看了一會兒金魚販。可是在我盯看著他的當兒,他依舊紋風不動。第九夜 世の中が何となくざわつき始めた。今にも戦争が起りそうに見える。焼け出された裸馬が、夜昼となく、屋敷の周囲を暴れ廻ると、それを夜昼となく足軽共が犇きながら追かけているような心持がする。それでいて家のうちは森として静かである。 家には若い母と三つになる子供がいる。父はどこかへ行った。父がどこかへ行ったのは、月の出ていない夜中であった。床の上で草鞋を穿いて、黒い頭巾を被って、勝手口から出て行った。その時母の持っていた雪洞の灯が暗い闇に細長く射して、生垣の手前にある古い檜を照らした。 父はそれきり帰って来なかった。母は毎日三つになる子供に「御父様は」と聞いている。子供は何とも云わなかった。しばらくしてから「あっち」と答えるようになった。母が「いつ御帰り」と聞いてもやはり「あっち」と答えて笑っていた。その時は母も笑った。そうして「今に御帰り」と云う言葉を何遍となく繰返して教えた。けれども子供は「今に」だけを覚えたのみである。時々は「御父様はどこ」と聞かれて「今に」と答える事もあった。 夜になって、四隣が静まると、母は帯を締め直して、鮫鞘の短刀を帯の間へ差して、子供を細帯で背中へ背負って、そっと潜りから出て行く。母はいつでも草履を穿いていた。子供はこの草履の音を聞きながら母の背中で寝てしまう事もあった。 土塀の続いている屋敷町を西へ下って、だらだら坂を降り尽くすと、大きな銀杏がある。この銀杏を目標に右に切れると、一丁ばかり奥に石の鳥居がある。片側は田圃で、片側は熊笹ばかりの中を鳥居まで来て、それを潜り抜けると、暗い杉の木立になる。それから二十間ばかり敷石伝いに突き当ると、古い拝殿の階段の下に出る。鼠色に洗い出された賽銭箱の上に、大きな鈴の紐がぶら下がって昼間見ると、その鈴の傍に八幡宮と云う額が懸っている。八の字が、鳩が二羽向いあったような書体にできているのが面白い。そのほかにもいろいろの額がある。たいていは家中のものの射抜いた金的を、射抜いたものの名前に添えたのが多い。たまには太刀を納めたのもある。 鳥居を潜ると杉の梢でいつでも梟が鳴いている。そうして、冷飯草履の音がぴちゃぴちゃする。それが拝殿の前でやむと、母はまず鈴を鳴らしておいて、すぐにしゃがんで柏手を打つ。たいていはこの時梟が急に鳴かなくなる。それから母は一心不乱に夫の無事を祈る。母の考えでは、夫が侍であるから、弓矢の神の八幡へ、こうやって是非ない願をかけたら、よもや聴かれぬ道理はなかろうと一図に思いつめている。 子供はよくこの鈴の音で眼を覚まして、四辺を見ると真暗だものだから、急に背中で泣き出す事がある。その時母は口の内で何か祈りながら、背を振ってあやそうとする。すると旨く泣きやむ事もある。またますます烈しく泣き立てる事もある。いずれにしても母は容易に立たない。 一通り夫の身の上を祈ってしまうと、今度は細帯を解いて、背中の子を摺りおろすように、背中から前へ廻して、両手に抱きながら拝殿を上って行って、「好い子だから、少しの間、待っておいでよ」ときっと自分の頬を子供の頬へ擦りつける。そうして細帯を長くして、子供を縛っておいて、その片端を拝殿の欄干に括りつける。それから段々を下りて来て二十間の敷石を往ったり来たり御百度を踏む。 拝殿に括りつけられた子は、暗闇の中で、細帯の丈のゆるす限り、広縁の上を這い廻っている。そう云う時は母にとって、はなはだ楽な夜である。けれども縛った子にひいひい泣かれると、母は気が気でない。御百度の足が非常に早くなる。大変息が切れる。仕方のない時は、中途で拝殿へ上って来て、いろいろすかしておいて、また御百度を踏み直す事もある。 こう云う風に、幾晩となく母が気を揉んで、夜の目も寝ずに心配していた父は、とくの昔に浪士のために殺されていたのである。 こんな悲い話を、夢の中で母から聞いた。這個社會逐漸動盪不安,眼看戰爭即將爆發。好比遭遇空襲無處可歸的無鞍馬,不分晝夜地在住家四周狂奔,而走卒們也不捨晝夜地猛追馬隻一樣混亂。可是在住家中卻呈現一片死寂。家中有一個年輕母親與一個三歲小孩。父親出門不知往何方去了。父親是在一個不見星月的深夜離家的。他是在房裡穿起草鞋,戴上黑頭巾,再從廚房後門離家的。那時,母親手持紙罩蠟燈,燈火細長地在黑夜中晃動,映照出籬笆前那株古柏。父親從此沒再回來。母親每天問三歲的孩子:「爸爸呢?」,孩子無言以對。過一陣子,孩子才學會回說:「那邊。」。母親問孩子:「爸爸什麼回來?」,孩子也只會笑著回說:「那邊。」。這時母親也會跟著笑開來。然後母親反覆地教孩子說:「不久就會回來。」,可是孩子只學會了「不久」這句話。有時問孩子:「爸爸在哪裡?」,孩子會回說:「不久」。每天夜晚,等人聲俱寂後,母親會繫緊腰帶,在腰間插上一把鮫鞘短刀,用細長揹帶將孩子揹在背上,再躡手躡腳從小門溜出去。母親總是穿著草屐。孩子在背上聽著母親的草屐聲,有時不知不覺便在母親背上睡著了。穿過一連串水泥牆圍繞的宅邸往西走,再越過漫長的斜坡,即可見一株高大的銀杏樹。以此為目標右轉,往裡走一百多公尺即有座神社的石牌坊。走在一邊是田圃,另一邊是叢生的山白竹小徑來到此石牌坊後,鑽進牌坊便是一大片杉林。再走過三十多公尺的石板路,便可到一棟陳舊的神殿階下。被風雨吹灑成灰白色的捐獻箱上,垂掛著一條頂端繫著銅鈴的粗繩,白天來的話,可見銅鈴旁懸掛著一個寫有“八幡宮”的匾額。“八”字像是兩隻對望的鴿子,很有趣。其他還有許多信徒獻納的匾額。多是諸侯臣下弓賽中獲勝的標的,標的旁刻有射手名字。也有獻納大刀的。每次躦過石牌坊,總可聽見杉樹枝頭上傳來貓頭鷹的叫聲。當然也夾雜著母親那破舊草屐的啪嗒啪嗒聲。草屐聲在神殿前嘎然而止,然後母親會先拉一下銅鈴,再蹲下身擊掌合十。此時,貓頭鷹通常會停止鳴叫。母親再全心全意地祈求夫君平安無事。母親認為,夫君是武士,因此在弓箭之神的八幡宮拜求,應該沒有不應驗的道理。孩子常被鈴聲驚醒,眼一睜看到四周一片漆黑,有時會突然在背上哭泣起來。這時母親會一邊嘴裡禱告,一邊搖哄著背上的孩子。孩子有時會安靜下來,有時會哭得更厲害。不管是安靜或哭得更厲害,母親都不會放棄禱告而站起身來。待母親為夫君禱告完畢後,會解開腰帶,把背後的孩子放下抱到胸前,再登上拜殿,一面哄著孩子說:「乖孩子,你等等喔!」,一面用臉頰撫摩孩子的臉頰。然後把細長的腰帶一方綁在孩子身上,另一方綁在神殿的欄杆上。最後走下階梯來到三十多公尺長的石板路上,來來回回拜祭踏上一百次。被綁在拜殿上的孩子,在黑暗的廊上,盡帶子所能伸展的長度四處爬動。這種時候,對母親來說是最輕鬆的夜晚。但若當孩子哭得驚天動地的夜晚,母親就會焦慮萬分,踏石板的腳步更顯得急促,時常上氣不接下氣。真沒辦法時,也只得半途而廢回到殿廊把孩子哄安靜後,再下去重踏一百次。如此讓母親晝夜牽掛,夜晚更不能安眠的父親,其實早就因流浪武士的身份而喪命了。這個悲哀的故事,是母親在夢中告訴我的。第十夜 庄太郎が女に攫われてから七日目の晩にふらりと帰って来て、急に熱が出てどっと、床に就いていると云って健さんが知らせに来た。 庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。ただ一つの道楽がある。パナマの帽子を被って、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて、往来の女の顔を眺めている。そうしてしきりに感心している。そのほかにはこれと云うほどの特色もない。 あまり女が通らない時は、往来を見ないで水菓子を見ている。水菓子にはいろいろある。水蜜桃や、林檎や、枇杷や、バナナを綺麗に籠に盛って、すぐ見舞物に持って行けるように二列に並べてある。庄太郎はこの籠を見ては綺麗だと云っている。商売をするなら水菓子屋に限ると云っている。そのくせ自分はパナマの帽子を被ってぶらぶら遊んでいる。 この色がいいと云って、夏蜜柑などを品評する事もある。けれども、かつて銭を出して水菓子を買った事がない。ただでは無論食わない。色ばかり賞めている。 ある夕方一人の女が、不意に店先に立った。身分のある人と見えて立派な服装をしている。その着物の色がひどく庄太郎の気に入った。その上庄太郎は大変女の顔に感心してしまった。そこで大事なパナマの帽子を脱って丁寧に挨拶をしたら、女は籠詰の一番大きいのを指して、これを下さいと云うんで、庄太郎はすぐその籠を取って渡した。すると女はそれをちょっと提げて見て、大変重い事と云った。 庄太郎は元来閑人の上に、すこぶる気作な男だから、ではお宅まで持って参りましょうと云って、女といっしょに水菓子屋を出た。それぎり帰って来なかった。 いかな庄太郎でも、あんまり呑気過ぎる。只事じゃ無かろうと云って、親類や友達が騒ぎ出していると、七日目の晩になって、ふらりと帰って来た。そこで大勢寄ってたかって、庄さんどこへ行っていたんだいと聞くと、庄太郎は電車へ乗って山へ行ったんだと答えた。 何でもよほど長い電車に違いない。庄太郎の云うところによると、電車を下りるとすぐと原へ出たそうである。非常に広い原で、どこを見廻しても青い草ばかり生えていた。女といっしょに草の上を歩いて行くと、急に絶壁の天辺へ出た。その時女が庄太郎に、ここから飛び込んで御覧なさいと云った。底を覗いて見ると、切岸は見えるが底は見えない。庄太郎はまたパナマの帽子を脱いで再三辞退した。すると女が、もし思い切って飛び込まなければ、豚に舐められますが好うござんすかと聞いた。庄太郎は豚と雲右衛門が大嫌だった。けれども命には易えられないと思って、やっぱり飛び込むのを見合せていた。ところへ豚が一匹鼻を鳴らして来た。庄太郎は仕方なしに、持っていた細い檳榔樹の洋杖で、豚の鼻頭を打った。豚はぐうと云いながら、ころりと引っ繰り返って、絶壁の下へ落ちて行った。庄太郎はほっと一と息接いでいるとまた一匹の豚が大きな鼻を庄太郎に擦りつけに来た。庄太郎はやむをえずまた洋杖を振り上げた。豚はぐうと鳴いてまた真逆様に穴の底へ転げ込んだ。するとまた一匹あらわれた。この時庄太郎はふと気がついて、向うを見ると、遥の青草原の尽きる辺から幾万匹か数え切れぬ豚が、群をなして一直線に、この絶壁の上に立っている庄太郎を目懸けて鼻を鳴らしてくる。庄太郎は心から恐縮した。けれども仕方がないから、近寄ってくる豚の鼻頭を、一つ一つ丁寧に檳榔樹の洋杖で打っていた。不思議な事に洋杖が鼻へ触りさえすれば豚はころりと谷の底へ落ちて行く。覗いて見ると底の見えない絶壁を、逆さになった豚が行列して落ちて行く。自分がこのくらい多くの豚を谷へ落したかと思うと、庄太郎は我ながら怖くなった。けれども豚は続々くる。黒雲に足が生えて、青草を踏み分けるような勢いで無尽蔵に鼻を鳴らしてくる。 庄太郎は必死の勇をふるって、豚の鼻頭を七日六晩叩いた。けれども、とうとう精根が尽きて、手が蒟蒻のように弱って、しまいに豚に舐められてしまった。そうして絶壁の上へ倒れた。 健さんは、庄太郎の話をここまでして、だからあんまり女を見るのは善くないよと云った。自分ももっともだと思った。けれども健さんは庄太郎のパナマの帽子が貰いたいと云っていた。 庄太郎は助かるまい。パナマは健さんのものだろう。阿健告訴我,庄太郎被女人迷走後,於第七天晚上突然回來了,一回來就發高燒,臥病不起。庄太郎是鎮內長得最俊的男子,而且善良老實。只是有個癖好。黃昏時,他喜歡戴著巴拿馬草帽坐在鮮果店前,眺望著路上的行人女子。然後頻頻讚嘆那些女子。除此以外,其他也沒什麼特點。若行人女子不多,他就看水果。店裡有各色各樣的水果,水蜜桃、蘋果、枇杷、香蕉等,都被整齊地裝在籃內,而且排成兩列,可讓買主買了後提著籃子去探病。庄太郎看著這些籃子,老是稱讚說好看。又說,將來若要開店一定只開水果店。說歸說,他卻成天老戴著草帽四處遊盪。他有時也會稱說這個橘子色澤好之類的話,但是從未花錢買過水果。要給他白吃,他絕對不吃。只是稱贊色澤。某天傍晚,一個女子出其不意地來到店頭。衣著華麗,想必是有身分地位的人。庄太郎非常中意她身上衣服的顏色。而且,對女子的容貌也心動不已。於是他脫下草帽恭謹地打了招呼。女子指著最大一籃水果說要買下,庄太郎立刻提起來給她。女子接過後提了一提,說太重了。庄太郎本就無所事事,人又爽朗,便回說我幫妳送到府上,然後和女子一起離開店頭。那以後,就沒再回來過。不管庄太郎人再爽朗,這未免太不像話了。正當親朋好友議論紛紛說這事非比尋常時,第七天晚上,庄太郎突然回來了。於是大夥兒聚集在他家,追問他這幾天到底去哪兒了,庄太郎竟回說搭電車到山上去了。那一定是很長一段旅途。根據庄太郎描述,他下了電車後發現來到一片草原。那草原非常遼闊,眼底下盡是青草。他跟女子走在草原上,走著走著來到峭壁頂上,這時女子對庄太郎說,你從這裡跳下去看看。庄太郎往下一瞧,雖可見峭壁岩石,但深不見底。庄太郎這時又脫下草帽,恭謹地辭退了女子的建議。女子又說,如果不願意跳,你會被豬舔,好嗎?庄太郎最討厭豬和雲右衛門(譯注:浪曲師)。可是性命畢竟是寶貴的,他仍舊選擇不跳。豈知竟真的出現了一頭哼哼直叫的豬。庄太郎不得已只好用手上那支檳榔樹枝製成的細長柺杖,往豬鼻頭打下。豬哀鳴了一聲,翻滾了幾下,掉落到絕壁下。庄太郎鬆了一口氣,不料又有一頭豬用牠那大鼻子蹭過來。庄太郎不得不又揮舞著柺杖。豬又哀叫著四腳朝天滾落到谷底。然後又一頭豬出現了。這時庄太郎才驚覺到遙遙對面草原盡頭,有數以萬計的豬群排成一直線,以立在懸崖上的庄太郎為目標,正在聳動著鼻子。庄太郎打心底驚慌起來。可是沒有其他法子,只好用檳榔樹柺杖小心謹慎地一頭一頭驅打挨近來的豬群。不可思議的是,柺杖只要稍稍碰到豬鼻,豬隻就會滾落谷底。往下看看,只見四腳朝天的豬群排成一列掉進不見谷底的深淵。庄太郎想到原來自己已推落了這麼多頭豬至谷底,不由得更覺恐懼。可是豬群仍接二連三挨近來。像是一大片烏雲長了腳,萬馬奔騰般蹚開草叢鳴著無窮盡的鼻子直飛過來。庄太郎拼命奮勇地打豬鼻,整整打了七天六夜。最後終於體力不支,手足像蒟蒻般軟弱無力,結果被豬舔了,然後倒躺在峭壁上。阿健只說到這裡,又加一句:所以最好不要隨便看女人。我也認為阿健說的很有道理。又想起,阿健曾說過想跟庄太郎要那頂巴拿馬草帽。我想,庄太郎可能會回天乏術。帽子大概是阿健的吧!

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